「今日もベンチだった」「あの子のほうが上手いから…」。
レギュラー争いのなかで、子どもが落ち込んだり、口数が減ったりする姿を見て、どう声をかければいいか迷う保護者は多いのではないでしょうか。
この記事では、日本スポーツ協会の「発育期のスポーツ活動ガイド」や日本スポーツ少年団の資料などをもとに、レギュラー争いのプレッシャーのなかで、親にできることを整理します。
この記事のポイント
- 日本スポーツ協会のガイドは、勝ち負けにこだわるより、上達や努力を重視する雰囲気づくりを呼びかけている
- できる目標を決めて、できたらほめることが、子どもの自信(運動有能感)を高めるとされている
- 同じ学年でも発育の個人差は大きい。
いまの出場機会だけで力を決めつけない
※ 「レギュラー争い」だけを取り上げた公的な資料は見つかりませんでした。
この記事は、スポーツ全般の子どもへの関わり方について書かれた資料を、レギュラー争いの場面に当てはめて紹介しています。
勝ちたい気持ちは悪いことではない
日本スポーツ少年団の資料では、子どものスポーツ活動の基本として、真剣な取り組みや厳しさは、子ども自身が目指すものであり、指導者や保護者、マスコミなどから強制されるものではない、と書かれています。
勝ちたい、試合に出たいという気持ちが本人の中から出てくること自体は、自然なことです。
問題になるのは、大人の側が結果を求めすぎて、子どもの負担になってしまうことです。
プレッシャーが強くなりすぎると
文京区教育委員会の健康教室(順天堂大学の先生による講義)の案内には、スポーツは子どもの心によい影響を与えることが示されている一方で、過度な勝利至上主義でのスポーツ体験は、子どもにとって望ましいものにならないこともある、と書かれています。
その中には、燃え尽き症候群の症状を示す子どももいる、とも説明されています。
日本スポーツ協会の「発育期のスポーツ活動ガイド」では、燃え尽き症候群(バーンアウト)を「目標を達成するために長い期間努力しても十分な成果が得られず、情緒的・身体的に消耗していくプロセス」と説明しています。
そして、バーンアウトしないように、適切な栄養と休養をとることを呼びかけています。
見分けるヒント:こんな様子はないですか
資料に、プレッシャーのサインの一覧があるわけではありません。
そのうえで、日ごろの様子の変化に気づくための目安として、次のような点を見ておくとよいでしょう(保護者向けの一案です)。
- 練習や試合の話をしなくなった
- 練習に行く前に、お腹が痛い・頭が痛いと言うことが増えた
- 食欲や睡眠がいつもと違う
- 好きだったはずのスポーツの話を、楽しそうにしなくなった
原因・仕組み:「出られない」だけで決まるわけではない
日本スポーツ協会のガイドには、成長を理解することの大切さも書かれています。
- 同じ学年の子どもでも、発育発達の個人差は大きく、「相対的年齢効果」がみられる
- 早熟な子どもは、その後の伸び代が小さくなる傾向にある
いま試合に出ている子が、そのまま将来も有利とは限りません。
逆に、いまは体が小さくて出番が少なくても、これから伸びる子もいる、ということです。
出場機会の差が、そのまま実力の差ではないかもしれない、という見方も持っておけると、気持ちが少し楽になります。
家庭でできること:声かけの方向を変える
ガイドには、子どもの心を育むために、次のような点が挙げられています。
- できる目標を定めて、できたらほめることで、運動有能感を高める
- 自分の中から湧き上がるような動機づけで運動することで、自主性を高める
- 勝ち負けにこだわるよりも、上達や努力を重視する雰囲気をつくる
運動有能感とは、運動することや自分に対する自信のことです。
「運動能力が優れている」「練習や努力をすればできるようになる」「周りに認められている」の3つの要素でできている、と説明されています。
レギュラーかどうかだけでなく、「できるようになったこと」を一緒に見つけて言葉にすることが、この自信につながると考えられます。
声かけの例を挙げます(資料の考え方をもとにした一案です)。
- 「今日は何ができるようになった?」と、成長を聞く
- 「次の練習で、これを一つやってみようか」と、小さな目標を一緒に決める
- 「悔しいよね」と、まず気持ちを受け止める
- 「出られなかった理由」を、親が決めつけない
反対に、「なんで出られないの」「あの子より下手なの?」といった言葉は、子どもの自信を下げてしまうかもしれません。
親が不安なときほど、聞き役にまわれるとよいでしょう。
練習との付き合い方
日本スポーツ協会のガイドは、心身への過剰な負荷や、暴力、ハラスメントをなくすことも呼びかけています。
出場機会を得るために、痛みを我慢したり、休むべきときに休まなかったりしていないか、気にかけてください。
痛みや疲れがあるときは、無理をさせずに休み、必要なら医療機関で相談してください。
また、チームの起用について疑問があるときは、感情的にならず、指導者に「どうしたら上達できるか」を聞く形で相談するのがよいでしょう。
日本スポーツ協会のガイドでも、保護者との連携(情報共有・コミュニケーション)が、育成の項目のひとつに挙げられています。
病院に行く目安
- 腹痛、頭痛、食欲不振、眠れないなどの体の不調が続いている
- 練習や学校に行きたがらない状態が続いている
- 元気がなく、ふさぎ込んでいる様子が長く続いている
資料には、受診を判断する具体的な基準は書かれていません。
ただ、体や気持ちの変化が続くときは、かかりつけの小児科や、学校のスクールカウンセラーなど、専門家に相談することをおすすめします。
痛みやケガがある場合は、整形外科を受診してください。
保護者ができること
- 結果の前に、様子を見る。「どうだった」より「楽しかった?」
- 他の子と比べない。発育の個人差は大きいと、公的な資料にも書かれています
- 小さな「できた」を言葉にする。運動有能感を高める土台になります
- 食事と睡眠を整える。栄養と休養をとることが、バーンアウトを防ぐ助けになります
- 親自身も、一人で抱えない。気持ちがしんどいときは、他の保護者や指導者に話してみる
よくある質問
Q. 本人が「もっと上手くなりたい」と言っているときは?
A. 真剣に取り組むこと自体は、子ども自身が目指すものであれば自然なことです。
そのうえで、目標を小さく決め、できたことを一緒に確かめる形で支えるとよいでしょう。
Q. 指導者に起用の理由を聞いてもいいですか?
A. 日本スポーツ協会のガイドには、保護者との連携(情報共有・コミュニケーション)が項目として挙げられています。
「どうしたらもっと上達できるか」を聞く形にすると、前向きな話がしやすくなります。
Q. 勝ちにこだわらないと、強くならないのでは?
A. 日本スポーツ少年団の資料では、勝利至上主義に偏ることからの脱却が、今後の課題として挙げられています。
勝ち負けそのものより、スポーツの楽しさやすばらしさを大切にしよう、という考え方です。
まとめ
- 勝ちたい気持ちは自然。
ただし、厳しさは子ども自身が目指すもので、大人が強制するものではない - 勝ち負けより、上達や努力を重視する雰囲気をつくる。
小さな目標と「できた」の声かけを - 発育の個人差は大きい。
いまの出場機会だけで将来を決めつけない - 体や気持ちの不調が続くときは、専門家に相談する
参考資料
- 発育期のスポーツ活動ガイド[PDF]|日本スポーツ協会
- スポーツ少年団組織と活動のあり方の解説書[PDF]|日本スポーツ協会 日本スポーツ少年団
- 子どもの心を育むスポーツとの関わり方(健康教室の案内)[PDF]|文京区教育委員会
この記事は、上記の資料をもとに、保護者の方向けにわかりやすく書き直したものです。
体調に不安があるときは、医療機関で相談してください。
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