「投げたあと、ひじをさわっている」「最近、肩をかばうような投げ方になった」――。
野球をしているお子さんの、そんな小さな変化に気づいたとき、「休ませたほうがいいのかな」「もう少し様子を見てもいいのかな」と迷う保護者の方は多いと思います。
この記事では、日本整形外科学会や日本臨床整形外科学会などの資料をもとに、野球肘・野球肩の早めのサインと、投球との付き合い方を整理します。
この記事のポイント
- 野球肘・野球肩は、成長期に投げる動作をくり返すことで、肘や肩に負担がかかって起こるとされています
- はじめは「なんだか変」という違和感だけのこともあります。
練習後に消えても、油断しないことが大切です - 痛みが出たら、まず投球を休むことが重要。
投球時に痛みがあるときは、整形外科の受診がすすめられています
野球肘・野球肩とは
日本整形外科学会の資料では、成長期にボールを投げすぎることで肘に起こる障害を「野球肘」と説明しています。
原因は、くり返しボールを投げることで、肘への負荷が過剰になることです。
肩の痛みである「投球肩(野球肩)」も、投球動作によって起こる痛みで、原因はオーバーユース(使いすぎ)とされています(日本臨床整形外科学会)。
発生しやすい年齢にも特徴があります。
日本臨床スポーツ医学会の提言をもとにした資料では、野球肘は11〜12歳ごろ、野球肩は15〜16歳ごろにピークがあるとされています。
また、投手と捕手に多いことも指摘されています。
早めに気づくためのサイン
肘のサイン
- 投球のとき、または投げたあとに、肘が痛くなる
- 肘の伸びや曲がりが悪くなる(急に動かせなくなることもあります)
- 「なんだか肘が変」という程度の違和感から始まることがある
運動器の健康・日本協会の資料には、肘の内側に起こる野球肘(最も多いタイプ)では、はじめは違和感程度で、練習後しばらくするとその違和感が消えることが多く、しだいに痛みが出てくると書かれています。「休んだら消えたから大丈夫」とは言い切れないことが、見逃しやすい理由のひとつです。
肩のサイン
- 投球のときに肩が痛む
- 投げ方(フォーム)が、以前と変わってきた
日本臨床整形外科学会の資料では、野球肩では、肩の痛みと投球フォームの変化に注意が必要とされています。
投球は5つの段階(ワインドアップ期・コックアップ期・加速期・減速期・フォロースルー期)に分けられ、どの動作のときに痛むかによって、痛めている場所をある程度推測できるとされています。
「いつ、どの動きで痛いか」を本人に聞いてメモしておくと、受診のときに役立ちます。
なぜ肘や肩を痛めやすいの?
日本整形外科学会の資料によると、野球肘は、痛む場所によって様子が異なります。
- 肘の外側:骨同士がぶつかり、骨や軟骨がはがれたり、傷んだりする
- 肘の内側:靱帯・腱・軟骨が傷む
- 肘の後ろ側:骨や軟骨が傷む
運動器の健康・日本協会の資料では、最も多いのは内側の野球肘で、外側は数が少ないものの、重症化すると大きな問題になりやすいと説明されています。
投げるとき、内側には体重以上の力で引っ張られる負担が、外側には体重の3分の2以上もの大きな負担がかかるとされています。
肩については、日本臨床整形外科学会が、150グラム弱のボールを、ほんの一瞬で時速100キロメートル以上に加速させる動作なので、腱板・関節唇・関節包複合体・上腕二頭筋長頭腱といった肩の組織が傷みやすい、と説明しています。
痛みがあるとき、家でできること
- まず、投げるのを休む。日本整形外科学会は、野球肘の治療では投球の中止が重要で、肘の安静が大切としています
- 痛みや動きをメモする。いつ・どの動きで・どこが痛むかを書いておくと、診察がスムーズになります
- 自己判断で再開しない。痛みが引いたように見えても、投げてよいかどうかは医師に確認しましょう
- ストレッチや筋力づくりは、医師の指示のもとで。日本臨床整形外科学会の資料では、投球を休む期間中にも、ストレッチや適切な筋力増強のトレーニングが必要とされています。
何をどれだけ行うかは、診察で確認してください
練習・投球との付き合い方
日本臨床整形外科学会が紹介している、日本臨床スポーツ医学会の「青少年の野球障害に対する提言」にもとづく資料では、次のような目安が示されています。
| 学年 | 投球数(試合を含む) |
|---|---|
| 小学生 | 1日50球以内・週200球以内 |
| 中学生 | 1日70球以内・週350球以内 |
| 高校生 | 1日100球以内・週500球以内 |
- 1日2試合の登板は禁止とされています
- 練習日数・時間は、小学生は週3日以内・1日2時間以内が望ましいとされています。
中学生・高校生は、週1日以上の休養日が必要とされています - 投手と捕手は肘・肩の障害が多いため、チームで2名以上を育てることが必要とされています
- シーズンオフには、小・中学生に野球以外のスポーツを楽しむ機会を与えることが望ましいとされています
- 肘・肩の障害は将来重い後遺症につながることがあるため、指導者と連携して、専門医による定期的な検診を受けることが必要とされています
これは、あくまで資料に示された目安です。
所属するチームや大会には、それぞれ独自のルールがあることもあるので、指導者にも確認してみてください。
また、運動器の健康・日本協会の資料では、小さいうちから肘に負担の少ない投げ方を身につけることが重要と述べられています。
病院に行く目安
- 野球をしていて肘に痛みがあり、動きが悪いとき(日本整形外科学会)
- 肘の曲げ伸ばしが悪くなった、急に動かせなくなったとき
- 投球のときに肩が痛いとき(日本臨床整形外科学会は、整形外科専門医の受診をすすめています)
- 痛みが続くとき、投げ方が変わってきたとき
診断は、X線(レントゲン)検査やMRI検査などで行われます。
治療は、投球の中止と肘の安静が基本で、手術が必要になる場合もあるとされています。
肩では、資料の中で、まず3〜4週間の投球の禁止と、そのあいだのストレッチ・筋力づくり、次にリハビリ、それでも痛みが取れないときは手術が必要になることもある、という流れが紹介されています。
実際の期間や内容は、診察で医師が判断します。
保護者ができること
- 「大丈夫?」
より「どこが、いつ痛い?」と聞く。責めずに聞くと、子どもも話しやすくなります - 投げた数を、いっしょに把握する。チームの練習だけでなく、家での投球やクラブ・学校の試合も含めて、数えてみましょう
- 「休む勇気」を認める。「休む=チームに迷惑」ではなく、「長く続けるための時間」と伝えましょう
- 指導者と情報を共有する。痛みや受診の結果を、遠慮せずに伝えておくと、練習内容の調整につながります
よくある質問
Q. 投げているうちに痛みが消えるなら、続けても大丈夫?
A. 運動器の健康・日本協会の資料では、内側の野球肘は、はじめは練習後にしばらくすると違和感が消えることが多く、しだいに痛みが出てくるとされています。
消えたことだけで安心せず、違和感の段階から相談することをおすすめします。
Q. 一度休めば、また投げられるようになりますか?
A. 同じ資料では、内側の野球肘は、一時的に投球を休むことで痛みがなくなり、また投げられるようになるとされています。
ただし、外側の野球肘は重症化しやすいとされているため、どのタイプかを医療機関で確認することが大切です。
Q. 何歳ごろから気をつければいい?
A. 資料では、野球肘は11〜12歳ごろ、野球肩は15〜16歳ごろにピークがあるとされています。
ただし、年齢に関わらず、痛みや違和感があるときは早めに相談しましょう。
まとめ
- 野球肘・野球肩は、成長期の投げすぎ(オーバーユース)が原因とされている
- 「なんだか変」という違和感や、フォームの変化が、早めのサイン
- 痛みがあるときは投球を休み、整形外科で診てもらう。
再開の判断も医師と一緒に - 投球数・練習日数・休養日の目安を知り、チームや家庭で共有する
参考資料
- 「野球肘」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
- 【親&指導者必読】子どもの「野球肘」を防ぐために知っておくべき基礎知識8選|公益財団法人 運動器の健康・日本協会
- 投球肩|日本臨床整形外科学会
- 野球少年へのアドバイス|日本臨床整形外科学会(日本臨床スポーツ医学会「青少年の野球障害に対する提言」にもとづく)
この記事は、上記の公的な資料をもとに、保護者の方向けにわかりやすく書き直したものです。
痛みや不安があるときは、医療機関で相談してください。
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