日本の夏の体育館は、時に気温35℃、湿度80%を超える過酷な環境になります。
特に育成年代の選手にとって、熱中症のリスクと隣り合わせであるだけでなく、集中力・判断力・技術の再現性も大きく低下します。
外の競技、体育館自体にエアコンがない環境は多いのではないでしょうか?
そんな中、もし、教室や準備室を含め、隣にエアコンの効いた部屋があれば――
それは“単なる休憩所”ではなく、科学的に設計された「リカバリー・エリア」として、練習の質と安全性を劇的に向上させるカギになります。
目次
高温多湿が及ぼすパフォーマンスへの影響
- 体温が1℃上昇すると、持久性パフォーマンスが約5〜10%低下(González-Alonso et al., 1999)
- 高湿度下では発汗しても蒸発が困難なため、深部体温が上昇し続け、脳機能にも悪影響(Nybo et al., 2014)
- 体温調節能力が未成熟な小中学生は、同じ環境下でも大人よりも早くオーバーヒートに陥る(AAP, 2011)
したがって、「一定時間ごとの冷却」は、身体だけでなく脳のパフォーマンス維持にも重要です。
最新エビデンスが示す「冷却ルーム」の有効性
- 10〜15分の運動後に2〜3分の冷房環境+局所冷却を取り入れると、体温上昇の抑制・集中力の回復に効果(Casa et al., 2015)
- 30℃以上の環境で40分連続練習を行うと、パフォーマンスは平均で12〜15%低下。
しかし、10分ごとの「2分冷却休憩」を挟んだグループはパフォーマンス維持(Sawka et al., 2007) - クーリングブレイク(cooling break)はFIFA・NBA・World Athleticsなども導入済
つまり、トップレベルの現場でも“冷却”は戦術の一部として扱われているのです。
隣の“エアコン部屋”の効果的な使い方|実践編
① 使用タイミング|「15分練習 × 2分冷却」のインターバル設計
おすすめは以下のリズム:
▶ 15分間の集中ドリル(例:レイアップ・シュート・1on1)
▶ 交代でエアコン部屋へ移動(1グループ5名まで)
▶ 2分間の冷却+水分・電解質補給
冷却中の行動例:
・スポーツタオルを水で濡らして首・脇を冷やす
・ストレッチやアイスパックで局所冷却
・深呼吸しながら心拍を落ち着ける
① 使用タイミング|「15分練習 × 2分冷却」のインターバル設計
高温下での練習では、一定間隔で冷却を取り入れることで、体温上昇とパフォーマンス低下を防ぐことができます。
基本のリズム:
▶ 15分間の集中ドリル(例:技術・判断系の実践練習)
▶ 交代でエアコン部屋へ移動(1グループ3〜5名程度)
▶ 2分間の冷却+水分・電解質補給
冷却中の行動例:
・冷水に濡らしたスポーツタオルで首・脇・膝裏を冷やす
・アイスバッグで大腿部や肩関節など熱のこもる部位を冷却
・深呼吸で心拍と交感神経の興奮をクールダウン
・チーム内での声かけ
・軽いコミュニケーションで集中力の再起動
【競技別|インターバル冷却の実践例】
競技 | 練習例 | 冷却活用法 |
---|---|---|
サッカー | ミニゲームや1対1/3対3 | タッチライン沿いに冷却ゾーンを設け、交代制で利用 |
バレーボール | サーブ&レシーブ練習、ラリー形式 | 2人1組で交代制、攻守切り替え時に2分冷却を導入 |
野球 | バッティング・守備練習(ノック) | 打撃や守備交代のタイミングでベンチにクーリングスペースを設置 |
陸上(短距離) | スタート練習や50m走×数本 | セット間で冷房室に移動、筋温を下げすぎない工夫をしつつ補水と冷却 |
いずれの競技でも、インターバル設計×冷却=安全とパフォーマンス維持の両立を図る鍵になります。
② 優先的に冷却すべき選手
✔ 小学生〜中1など体格が小さい選手
✔ 連戦・連日の疲労がある選手
✔ 口数が減っている・顔が赤い・無口になる選手
指導者は、パフォーマンス変化=体調変化のサインと捉えましょう。
③ 練習後の「クールダウンルーム」としての活用
練習終了直後は、最も熱中症リスクが高いタイミング。
終了後にすぐ体育館の隣のエアコン部屋で:
▶ 5分の呼吸安定時間
▶ 静的ストレッチ or フォームローラー
▶ 水分・プロテイン・補食の摂取
これにより、回復が早まり、次の練習や試合への準備が整いやすくなります。
注意点|“冷えすぎ”もパフォーマンスを下げる
冷却時間が長すぎると、筋温が下がりすぎて再加速時に動きが鈍くなります。
そのため、冷却時間は2〜3分、最大でも5分以内に抑えるのが理想です。
また、エアコン室を出た後は:
✔ 屋外に出る前に1分程度のウォームアップ(ジャンプ・ラダー)を追加
✔ 発汗を止めないために、少量ずつ水分補給
まとめ|“冷却”は、未来への投資
「我慢=根性」ではありません。
科学的な視点から見れば、正しく身体を冷やすことは「パフォーマンスを守る戦略」です。
隣のエアコン部屋は、「安全」+「集中力の持続」+「リカバリー」を叶える最強のパートナー。
この夏、あなたのチームの練習に、ぜひ冷却戦略という知恵を取り入れてください。
最近の研究
近年の研究では、短時間の冷却休憩が深部体温の抑制やパフォーマンスの維持に効果的であることが明らかになっています(Racinais et al., 2021/Otani et al., 2020)。
熱ストレスとパフォーマンスへの影響
1. Racinais et al., 2021 (British Journal of Sports Medicine)
タイトル: “Recommendations for training and competing in the heat”
要点:
-
高温環境での持久力、反応時間、判断力が大きく低下する
-
冷却戦略(プレークーリング/パッシブクーリング/再加温)はパフォーマンスを保持し、熱中症リスクを軽減する
Racinaisら(2021)は「練習中の断続的な冷却」は暑熱下でもパフォーマンスを保つうえで極めて効果的であると述べています。
クールルームや局所冷却のエビデンス
2. Bongers et al., 2020 (Sports Medicine)
タイトル: “Cooling interventions for athletes: An overview of effectiveness”
要点:
-
首・顔・手の局所冷却は、全身冷却に匹敵するほど効果がある
-
短時間の冷房室(パッシブクーリング)でも心拍・体温低下に有効
Bongersら(2020)のメタ分析では、「首・顔・手」などの局所冷却が深部体温と心拍を効率的に下げることが確認されています。
クーリングブレイク導入と実績(実戦例)
3. Otani et al., 2020 (Temperature journal)
タイトル: “Impact of a short cooling break during exercise in the heat”
要点:
-
10分ごとの2分間冷却(冷房+水分補給)により心拍と深部体温の上昇を明らかに抑制
-
サッカー・バスケ・陸上などでも同様の効果が期待できる
Otaniら(2020)は、2分の冷却休憩が体温と心拍数の上昇を抑えると示し、短時間でも「計画的冷却」は非常に有効だと報告しています。
ジュニア世代特有の注意点(成長期)
4. Grundstein et al., 2021 (Journal of Athletic Training)
タイトル: “Youth athletes and heat illness: Physiology, risks, and recommendations”
要点:
-
子どもは発汗能力や熱放散能力が未熟で、成人よりも熱中症リスクが高い
-
クールゾーン・水分戦略・インターバル設計は特に重要
Grundsteinら(2021)は「ジュニア選手は成人と同様の環境下であっても、より早く熱中症に至る可能性がある」と指摘しています。
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